誰がどんな役割を担ってもいい
2025/11/25
■家族優先、夫優先で過ごしてきて
――結婚して21年、夫から離婚を迫られています。良い家族は良い夫婦からと思い、家族優先、特に夫優先で過ごしてきたうえ、子どもたちが小さい頃は2、3年ごとに転勤があって慌ただしく過ごしていたら、気がつけば私にはこんなときに相談できる友人が一人もいませんでした。ただ、これを機に、娘たちも手がかからなくなったことだし、自分の周りの人間関係を改めて作っていくチャンスかもしれないと思いました。
〈高尾美穂からのリアルボイスへ寄せられたレターから〉
これまでは良い家族を作るため、守っていくために本当に長い間尽力されてこられたと思います。でも、パートナーから関係性が心配になるような申し出があって、こちらは十分頑張って、いろいろなことをある意味犠牲にして役割を担ってきたのに、相手にはそこを理解されていない。本当にモヤっとしますよね。
パートナーシップにおける役割分担もあれば、親子の間の役割分担もあります。たとえば、年齢を重ねたお父さん、お母さんにご本人と弟さんがいて、お姉ちゃんであるこの方はずっと親御さんのお世話をしてきた。弟さんは近くにはいるけどほとんど何もしてこなかった。それでも、財産の相続内容が弟さん優先になっているというのは、よく聞く話です。
誰がどんな役割を担ってもいいんだよね、という認識をみんなが持てたらいいのに。いつもそう思います。女性だからこうしなきゃ、男性だからこうあらねば、じゃなくていいんですよね、本来は。でも、まだまだ世の中の多くはそういったニュアンスで語りがちです。

■なんとか食事を作り続けていますが
――私は日々の食事作りが本当に苦痛で、パートナーに食事の手伝いをしてほしいと時折話すのですが、黙って聞いているだけで、私がしてほしいことを一つ終えるとすぐ自分の部屋へ戻ってしまいます。食事ができたと声をかけても、ゲームのタイミングが終わったら食卓に座り、お皿洗いをしてくれるとすぐにまた自室へこもってしまいます。
以前はもう少し子どもたちとも接していたように思いますが、最近の週末はほぼ部屋から出てきません。
子どもたちの手前、なんとか食事を作り続けていますが、大きなため息を何十回と繰り返してしまう10年です。離婚するほどではないけれど、子どもたちが成人したら一人で暮らしてみようと考えています。
〈高尾美穂からのリアルボイスへ寄せられたレターから〉
生活していく上で必要なことは、たとえば、ごはんの準備とか、お皿洗いとか、洗濯機を回すとか、洗濯物を干すとか、取り入れてたたむとか、結構な数あって、でも、家族の中での役割分担はだいたい最初の頃に決まってしまうんですよね。そこから先は大きく変わる機会もなく、メインの役割を担っておられる方以外は、自分の役割ではないと思っている節がある。日常の多くの役割を、女性だけで担っているご家庭がまだまだ多いように思います。
■何かアクションを起こしてみて
こうした役割分担を急に大きく変えることは難しいだろうと諦める方が少なくないでしょうが、言い出さないと変わらないことも確かで、困っていることがあるとか、やってもらいたいことがあるとか、「〇〇歳の誕生日の記念に、これからはこの役割をあなたにお願いしたい」と、ご家族に伝えてみるのも一つの方法です。退職されたりご病気されたりといった節目が、「今後はこの分野を誰々にお願い」と割り振りを変えるきっかけになるかもしれません。
女性もフルタイムで働いて、さらに子育てや介護をしている方も少なくない時代ですし、どんな時間を過ごしたいと願っているのか、一度ご自身でよく考えてみてはいかがでしょうか。そして、自分で考えているだけじゃ何も変えられないと気づくと、何か行動を起こしてみよう!となる。自分に対する行動でもいいし、周りの方に対するアクションでもいいかもしれない。動くと、何かが変わります。
男性がご家庭での役割をもっと担っていく分野を、それぞれのご家庭で増やせるといいですよね。そして、お子さんが小学生ぐらいからジェンダーに関わる課題を自分なりに考えていくことで、その方たちが成人して社会の真ん中の世代になる頃には、誰もが、今よりもっとずっと生きやすい世の中に変わっているだろうな、と思っています。
この話題は、同世代の多くが感じている課題です。この分野の悩み、困りごとは本当に根深いものですし、ある意味風土、ある意味文化ですから、すぐには変わりません。でも、ここで諦めず、腐らず、少しずつ世の中が望ましいあり方に変わっていくその過程を、みなさんと一緒に見守っていけたらと願っています。
※2025年7月27日配信「高尾美穂からのリアルボイス」を元に一部を再構成しました。