8月はこれまでから学ぶ月
2025/08/16
■正しい平和教育は必要だと、強く強く思いました
――今日8月6日は、広島に原子爆弾が投下されて80年の日です。中学3年の娘は広島で生まれ、小学3年まで地域や学校で平和教育を学び、テレビでも見聞きしてきました。広島を離れた今もテレビで式典を見て、当たり前のように8時15分にスッと立ち上がり黙祷をする姿を見て、まあまあ育っていると思ったと同時に、学校での正しい平和教育や歴史教育は必要だと、強く強く思いました。広島での教育は私たちの宝物です。今日、おそらく広島県内の学校は登校日。戦争と平和のお話を聞いていることでしょう。間違った歴史を大きな声で言う人がいる今日この頃、まずは正しい事実を知ることから、考えていきたいです。〈高尾美穂からのリアルボイスへ寄せられたレターから〉
小中学校は夏休みですが、広島では登校日が設定されているんですね。私も「今日は8月6日だ」という思いを胸に抱きながら一日を過ごしました。広島や長崎で被害を受けられた方、そのご家族、そして、そんなおじいちゃん、おばあちゃんをおもちの方たちとは、重さも深さも全然違うだろう、と言われればその通りかもしれませんが、私にとっても、8月6日と8月9日は哀しい記憶の日です。
世界で唯一の戦争による被爆国として、今、世界の情勢がかなり不安定になる中で、さらには国内においてもこれまでは聞かれることのなかったような考えや方向性が声高に叫ばれる中で、考えないといけないこと、次の世代に語り続けていかないといけないことがあります。私たちも戦争を知らない世代ですが、戦争を知らない世代だけになった日本が、戦争を知らないから何を選んでもいいのか、といったら、絶対に違うわけですよ。
脈々と受け継がれていく思いや大切な軸のようなものは、私たちの世代も責任を持って次の世代に届けていかなければいけない。今日一日を通して、改めてそう感じました。

2025 2/10 長崎市 平和公園 訪問時に撮影
■戦後生まれも平和を願う日です
――今日は広島原爆の日。戦後生まれの私も平和を願う日です。私の父は92歳になりました。ちょっと変わった人で、いろいろな感情を持ってきましたが、あとどれだけ関わることができるかわからないので、後悔のないように日々を過ごしていきます。〈高尾美穂からのリアルボイスへ寄せられたレターから〉
お父さまは戦争を経験された世代で、もちろんうちの父も母もその世代です。たまたま違う土地に過ごしていたことで、たまたま今を生きられている。そんな世代の父母を持つ私たちの世代が、語れなかったこと、語られてこなかったこと、そして歴史が残してくれたことを学び、正しく受け取って、正しく伝えていく、正しく解釈していく。そんなことがみんなでできたらな、と改めて願った次第です。
■何かを知り、感じ、考え、行動するタイミングに
私たち一人一人にできることは、実際には大したことはないんですよ。でも、戦争を起こしたのも人で、日本に原爆を落としたのも人。私たちの国も、戦争を大義に武力をもって他の国の人の生きる権利や人らしく生きる権利を奪った歴史もあります。人はもしかすると、すごく大きなこともできてしまうかもしれない、しかも、周りの方たちのみならず、まったく知らない誰かの幸せや希望、未来そのものを奪うようなことすらできてしまう。そんな”人”に宿る恐ろしさも、私たちはしっかりと知っておく必要があるわけです。
私たちも、自分は小さな力しか持っていないから、と思うのではなく、大事な部分はみなさんと共通しているという考えを持って、日本で生まれ育った方も、途中から日本に加わってくださった方も、日本からどこかにいらして過ごしておられる方も、どんなルーツをお持ちの方も、皆さん一緒に、これからの世界の平和、あり方について考えていけたらいいですね。
私自身は夏が好きで7月は心から楽しく過ごしますが、8月はなぜか、はしゃげなかったんですね。それは、私たちの国にとって戦争の記憶がある哀しい季節だからなのだと、今日改めて感じました。今まで言葉にして来なかったけれども、間違いなく私のベースにあったものに気づき、理解できて、また一つ前に進むことができた一日になりました。
8月にはお盆もあり、私たちの祖先をお迎えして、またお見送りする文化もあります。8月は、これまでを振り返り、私たちがこれまでに出会えた方たちを思い起こす機会であり、その存在に感謝の気持ちを抱くと同時に、これまでから私たちが何を学ぶのかを考えるときでもあります。何かを知り、何かを感じ、何かを考えて、何かを行動する。今をそんなタイミングにできたらいいな、と思います。
皆さんらしい8月をお過ごしいただければと願っています。
※2025年8月6日配信「高尾美穂からのリアルボイス」を元に一部を再構成しました。