他業種から学ぶサービス

私が平日に銀行の窓口を訪れる機会はほとんどありません。インターネットバンキングの発達によって、最近では通帳の記帳ですら何か月に一度という始末。それでもほとんどの業務はパソコンかスマホに向かえば事足りてしまうわけですから、インターネットの発達はほんとうにありがたいことです。

ただ、インターネット相手にでは得られないサービスが対ひと では得られることもあります。特に銀行の一般窓口ではない、顧客用のスペースではそれなりの応対を受けることがほとんど。その場に相応しいコミュニケーションスキルを持った方の洗練されたサービスに触れることができます。

医療に従事する者も、医療という技術・情報を提供するサービス業であると常々思っているとおり、自分もこうでありたい、と思える言葉のチョイス、選択肢の提示、物腰、雰囲気作り、こちらの要求への対応などなど、学ばせていただく点はたくさんあります。そしてご自身の職務権限内で良きようにアレンジくださる対応には、サービス業での経験からでしか得られないであろう技を感じます。顧客の小さなわがままを上手に聞き、場を切り盛りし、ある程度の満足感をきちんと感じさせるテクニック。きっと相手の手のひらで上手に転がしてくれているのであろうことは想像できても、そうであることに対して少しも嫌な感じを感じさせない。さすがです。

私たちの仕事もすべてがケースバイケース。外来で100人の方にお会いしたとしても、1例としてまったく同じ症例に出会うことはありません。またパーソナルトレーナー、インストラクターのみなさんにしても同じことが言えることでしょう。クライアントの現状、置かれている環境、本人が求める要望、みな異なるわけですから。
たとえば『かゆい』という主訴の方が、一体なにを求めてクリニックに来られたのか。夜も眠れないかゆみをどうにかしてほしくて来たのか、かゆみの原因はなにかを知りたくて来たのか、心配なさそう、大丈夫、という言葉を聞きたくて来たのか。また、ゆっくり訴えを聞いてほしい日なのか、それとも次の予定があってあまり時間がない日なのか。
これらを知るには、その方のお話しや状況をきちんと把握する以外に方法はありません。

卓越したサービス業のプロは、私の要望を短時間でほぼ正確にキャッチします。私が今日は早く仕事に戻りたいと思っているから、時間を必要とする確認作業の結果は後ほど留守電に残す、などの判断に大きな判断ミスはありません。

自分がサービスを受ける側として他業種のプロから学ぶ対応の術を、自分自身の分野にも取り入れていきたいと思う今日このごろです。

関連記事