クリニックにおけるがん告知は難しい

無床診療所であるイーク表参道の外来にも、がんの告知をしなければならない患者さんがいらっしゃいます。確定診断となるコルポスコピー+組織診を行っている以上、悪性の結果を受け取ることも当然あり得るわけで、がんであるという告知も避けられない仕事です。
今回は、毎年毎年子宮頸がんの検査をしてきて、毎年異常がなかったのにも関わらず、今年の細胞診でHSIL、当院で施行した組織診でがんの病理診断を得た方にお伝えをしなければなりませんでした。

私の手元にある情報は組織診による病理検査の結果だけであり、がんであることを伝えなくてはいけないけれども、患者さんが知りたいような どのくらい進行しているのですか? 子宮は残せますか? 入院期間はどのくらいですか? そういった質問にはほとんど答えられないのが現実です。これから造影CT検査やMRI検査、腫瘍マーカー、場合によっては尿路系の検査など必要な検査を行い、病気の広がり、リンパ節転移の有無、遠隔臓器転移の有無、などによって術前診断が確定していきます。

大学病院や総合病院の外来でがんの告知をしてきたときには、がんだとわかりました、これから精密検査して、どんな方針が一番おすすめかを決めていきましょう。そんなニュアンスで上手くお伝えすることができるのですが、現在のクリニックでがんであることを告知したとしても、その先に関しては高次医療機関に任せるしかない状況があります。
次なる検査結果という情報を持たないまま、患者さんの質問にすべてクリアにお答えすることは間違いなく無理なことであり、可能性の高い選択肢を、歯切れ悪くお伝えするしかないわけです。さらに、がんだとわかった段階で、聞きたいことは山ほどあるのにも関わらず次の病院へ行かされてしまう。そういった不安から、より多くの質問が出てくるものです。

ただ、目の前にいる悩める患者さんを、この先生ならきっとベストの治療をしてくれる、と胸を張って送り出せる紹介先を持っていることは幸せです。それはもちろん手術の腕前だけではなく、がんという非常にナイーブな問題を丁寧に取り扱ってくれるであろう人となりや、その先生をサポートするチーム体制ができているかなどを考えた上での選択となります。

毎年毎年子宮がん検査を受けていたからこそ、早い段階で見つかった。良かった。そういう結果になることを願っています。

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