婦人科の高尾と申します

初めて外来でお会いする方、とくに人間ドックや婦人科検診にいらっしゃった方はほとんどが初めての方ですので、そんな方たちには必ずこうご挨拶してから診察をはじめます。
『婦人科の高尾と申します。よろしくお願いします。』

私から よろしくお願いします と挨拶して、お願いします と返していただけない方はごくわずか。お互いにとても気持ちよく診察をスタートすることができます。

先日、来院した友達に、友達ではあるけれども一応挨拶はしようと思い、『婦人科の高尾と申します。よろしくお願いします。』といつもどおりの挨拶をしたところ、こんな返事が返ってきました。

医者にかかって、こんな挨拶されたことない!

友達はスポーツする一般的な若い女性ですので、肌荒れや腰痛、風邪などで皮膚科、整形外科、内科などちょこちょこかかるとのこと。でも、なかなか感じいい人(医者)はいない。早く終わらせようっていう気持ちが見え見えの診察ばっかり。ちゃんと話してくれる人はとても少ない。感じいいお医者さんを覚えているくらいだから、ほとんどの人がみんなやっつけ仕事に思えてしまう。そんな直球のご意見をいただきました。

20年も前は『お医者さま』の時代でした。医者の言うことはほぼ絶対で、かつ診療内容を訴えられたりすることもまずありませんでした。時代は流れ、医者はピンで動ける立場ではなくなり、医師や看護師、薬剤師、放射線技師、検査技師などをはじめとする医療グループの一員という立場に変わってきました。また、以前は上下関係があるかのような診療がほとんどだったようですが、現在は医師は患者と同じ目線で対応することがあたりまえとなっています。

医学部時代の臨床実習でも、診療のはじめには自己紹介、相手(患者)の名前の確認 と学ぶはずです。しかし実際、医師にしてみたら、診療時間と予約人数のバランスや次のopなどのスケジュールの都合で、省略できるとことは省略したいと思うのかもしれません。私も総合病院に在籍した時代が一番時間に追われていました。なんでも自分たちですまさなくてはいけない。今はその当時と比べれば詰め詰めキツキツということはありませんので、時間的にも気持ち的にも余裕をもって患者さんに対応できるのは確かです。

私はいつも『医療はサービス』と思い、日常を過ごしています。特に、カラダのどこかに不調を抱えて訪れる先で、残念なサービスしか受けられなかった という経験は申し訳ないとしか言いようがありません。
自分を含めた医療業界の『サービス精神』の希薄さには、これから反省と改善が必要だなぁと、友達の言葉を聞いてあらためて感じました。

心の伴わないただの丁寧語や接遇、マニュアルは必要ありません。訪れた方が、なにを望んでいらっしゃったのか、なにを困っておられるのか、きちんとお話しを聞くことで、答えは必ず見えます。私も再度、自分の診療スタイルや言葉遣いを振り返ってみたいと思っています。

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