空での出会い

昨日の帰りの便 熊本-羽田のフライトで、うれしい時間がありました。
台風27号の影響で、発着時間が変更になったり、気流の乱れにより電車に乗っているくらいの揺れがあるフライトでした。私にとってこんなマイナートラブルはまったく問題ではありません。

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写真は乱気流の中、がんばって飛んでくれた機体のおとなりにとまっていた飛行機。
国内線ですので、正直多くを期待して飛行機に乗り込むことはありませんでした。強行軍の学会スケジュールが無事に終わり、台風の中帰りの便がちゃんと飛んでくれるかも心配だったのですがその不安もなくなり、ほっとしながら、かつぼ~っとしながら乗り込みました。特に優先搭乗でもなく、1列しかない通路が混雑のため進む足が止まったとき、ちょうどコックピット裏あたりだったこともあり、搭乗の案内のため立たれていたCAさんに声をかけられました。
「その傘はご自身で使われるのですか?」
確かに、こう尋ねたくなるのもわかります。私が愛用している傘は児童用のジャンプ傘で、しかも7色のレインボー。大人が使う傘には思えません。しかも、手で持った状態ではなく、丈が短いという理由で一部は鞄の中、傘の先半分だけが見えている状態での質問でした。自転車と車での移動が多い私にとって傘はよく持ち歩くアイテムではなく、雑貨屋さんで気に入ったこの傘をもう数年愛用しているのです。
すでにスイッチがoffモードに入っていた私にとって、この質問は不意打ちに近いものがありました。ただ、通路の混雑が解消されるまでの数秒の時間でしたので、特に気負うこともなく、またたいした期待をすることもなく会話をし、着席しました。
国内線は機体の大きさによって、CAさんたちの動きがよく見えることがあります。昨日はたまたま、アナウンスをするCAさんがよく見える席でした。いつもそうですが、耳ざわりのよい日本語と非常に流暢な英語。話しているのは先ほど私に声をかけてくれたCAさんでした。普段のフライトであれば耳に残ることもありませんが、その日はよく記憶に残るアナウンスでした。日本語では機長とチーフパーサーの名字のみをアナウンスしますが、その後の英語ではフルネームでのアナウンスとなります。昨日のチーフパーサーは濱中あゆみさんでした。
アナウンスの頃は、今日のCAさん英語うまいなぁ。それくらいの印象でした。次にチーフパーサーの彼女が接してくれたのはフライトがある程度安定し、ドリンクサービスも終わった頃。眠気も出てきて、さらにぼ~っとしていたであろう私に
「なにかお飲み物はいかがですか?」
国内線でかつプレミアムクラスの設定もない路線でしたから、本当になにも期待をしていなかったというのが正直なところでした。冷たい緑茶をお持ちいただいた際、ラルフローレンの服について尋ねられました。
「お召し物はすべてRUGBYのラルフローレンなのですか?」
昨日の私の出で立ちといえば、鮮やかなグリーンのパンツをロールアップして厚手のソックスにごついレースアップブーツを履き、白地に赤のピンストライプのシャツ+深緑とイエローのレジメンタルのタイ、ビーズ細工で国旗をデザインしたベルトと、紺の燕尾タイプのエンブレムブレザー。学会には黒っぽいスーツでいらっしゃる先生方が多い中、ちょっと自分でも反省してしまうほど色鮮やかなコンビネーションでした。
ジャケットはRUGBYラルフローレンで、あとは普通にラルフローレンです。そんなお答えをしたかと思います。
「まさにラルフローレンを体現されてますよね!」そんなお言葉をいただいたので、
「私に服を選んでくれているラルフローレンのスタッフがそれを聞いたら喜ぶと思います」そんな会話をさせていただきました。
私は同じ人から服を買い、同じ人から車を買い、同じ人に髪を切ってもらい、同じ人にごはんを供してもらう。そんなスタイルを選んでいる。先にこういった記事を書きました。私にとってはそうであることが望ましいのですが、普通に生活しているとそのスタイルを押し通すことが難しいことはたくさんあります。スターバックスで同じスタッフに当たることはそうそうないですし、gymのチェックインカウンターで会うスタッフも、ある程度のサイクルはありますがばらばら。非日常のことであればなおさらです。飛行機に乗ったときに出会える方とは、まさに一期一会くらいのご縁でしょう。
普段私は、おなじみの方ではない方からサービスを受けるときに、過度の期待をしないよう気持ちが勝手に切りかわっているようです。元々穏やかな性格ではありますが、その方がきっと、イラっとしたり怒ってしまったり、そんなことがないだろうから。
そのような中で、ただの会話と言ってしまえばそれまでですが、気にかけて声をかけてくださる気持ち=サービスの原点 なんだろうと思います。
昨日の濱中さんをチーフとするCAはすばらしいチームでした。
「東京の天気はどうでしょうかね?」「ただいまくもりだそうです。台風は大丈夫なようですよ」搭乗時そんな会話をしたのち、到着前になって新しい天候の情報を「残念ながら東京では雨が降りだしたようです」 と伝えにきてくださったCAさんもいらっしゃいました。また、乱気流でシートベルトサインが出ているあいだ、ひとりの男性がトイレに行こうとするのをその時にはきちんと制止し、フライトが安定してからフォローをする姿もみられました。コーヒーを少しだけテーブルにこぼした男性にも、洋服の汚れがないかを先にお尋ねになっていました。
フライトアテンダントの方々にしたら、マニュアルどおりであたりまえのことなのかもしれません。ただ、その一言が癒しになったり、感謝の気持ちにかわったりすることは往々にしてあることだと思います。私たち空の上でサービスを受ける側には、それが安心に変わったり快適な時間につながったりすることは間違いありません。
私のようにサービスを提供する側の仕事に携わる者にとって、フライトアテンダントの方々の言葉や姿勢や態度は最高のお手本になります。素晴らしい教育のシステムの中で、志高く向上心をもって日々精進されている方々を拝見することはその後の自分にとてもよい刺激を与えてくれます。
このたびのHN650便のフライトにおける濱中あゆみチーフパーサーをはじめとするCAチームに、心からの感謝をこめて。ありがとうございました!
(チーフパーサーのお名前について、漢字表記は濱中までが正確です)

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