トンボのいのち

朝、yogaマットを軽くたたんで帰宅しようとしたところ、小さな音が… バタバタ バタバタ 
音のあたりを見てみると、ウッドデッキのすきまに片側の羽根を落として、胴体がちょうどデッキのすきまに挟まれるかたちで 大きなトンボが羽根をバタバタしていました。
私は普段からいのちあるものを大切にしたい という気持ちがあり、蚊もゴキブリも できることなら殺すことなくその場から逃がすようにしています。ほんと?って思うかもしれないけれど、本当です。
トンボの胴体は、ちょうどぴったりすきまにfitしてしまっていて、どれだけ羽根をばたつかせても自力で上がることは難しそうに思えました。まず、ウッドデッキの上に出ている羽根を軽くつまんで、テンションかけすぎないように引き上げてみました。無理。
私が朝、yogaのために持って来ているものはマットとiPhoneと家の鍵だけ。
あきらめきれない私は、家の鍵を使って胴体をすくい上げるようにしてみました。
胴体さえ出れば、トンボは青空に羽ばたいていくだろうと思って。
鍵ですくい上げる作戦は非常にうまくいき、トンボのカラダはすべて 胴体も両方の羽根もちゃんとウッドデッキの上に出ました。なのに…

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トンボは青空へ羽ばたいていきませんでした。
きっと、デッキのすきまでもがく間に、いろいろなところが傷ついてしまっていたのでしょう。
傍から見たらあきらかに変わった光景ですが 『がんばれ!』『ほら、飛びな!』 そう言いながらトンボに顔を近づけてしばらく見つめていました。けれどトンボは軽く足を曲げ伸ばしするのみ。挟まれてバタバタしていた頃は元気に動いていた胴体のしっぽにあたる部分も垂れ下がり、地面に着いてしまっていました。
きっと、もうすぐトンボの寿命がおわる。
そう感じた私はほんとうに切なくなり、まだいのちあるけれども動かないトンボを置いてその場を去りました。
明日の朝、私はいつもと同じようにウッドデッキに行くでしょう。そしてトンボがいないことを確認することでしょう。トンボはきっと、自分の力で飛び立っていなくなったわけではないでしょう。
私たちは時代とともにたくさんのことができるようになりました。でも、できないこともたくさんあります。けして傲慢であってはならない。トンボはそのことを教えてくれた気がします。
もう、十分すぎるほど技術やテクノロジーは進化しました。今できないことはできないままで十分なことが多いと思います。たとえば、天候を変えられるような時代は来なくていいと思うし、亡くなったいのちを甦らせることもできなくていいと思うし。
自然、生きもの、空、大地、次の世代へ伝えたい大切なものはたくさんあります。
私たちには なにが大切なことで、なにはそれほど大切ではないのかをきちんと見極めることをしていく責任があると思います。
今朝の青すぎる空に、トンボが羽ばたいていくのを見たかったな…

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