これからどんな資格をとるべきか

お受けする相談の中で、よくよくあるのがこの質問。
『これからどんな資格をとるべきか』

もちろん、今現在その方がどんな資格を持ち、どんなことをされているかによってお答えはまったく変わってくるわけですが、どんな方にも共通して言えることはふたつ。

1つめ いただける資格よりも、資格をいただけるまでの過程が大事だということ。
2つめ その資格だけで生きていけるような資格は、そう簡単には取れないということ。

1つめ。いただける資格よりも、資格をいただけるまでの過程が大事だということ について。

これはあらためて言うまでもありません。その道を極めていったら資格がいつの間にかついてきた、それが一番望ましい流れのように思います。アシュタンガヨガでは、asanaを先生から授けていただく という仕組みで先へと進んでいきます。プライマリーシリーズができるようになったら翌日からセカンドを練習するわけではなく、先生がGOサインを出すまではずっとプライマリーを練習します。私が幼いころから習ってきたバイオリンもそうでした。自分がひとつの曲を弾きこなせるようになったと思っても、次の曲の楽譜をいただけるまでの時間は、まだ幼かった私にとってはとても待ち遠しく感じられるものでした。

特に職人さんのように、師匠から技を学び取る そんな世界においては、この考え方が強く生きているかもしれません。調理師免許を持っているからといって立派な板さんであるとは限らない、そんなイメージ。そう考えると結果より過程、この考え方はもともとは日本の謙遜や美徳の精神に根付いたものなのかもしれません。欧米では結果のみが重んじられますし、日本でもかなり結果が重視される時代に変わってきました。結果が重要視される意味はよくわかります。productとしての結果が存在していれば、その評価はとてもたやすいものですから。逆に、表立って見えることはないその”過程”を評価することは簡単なことではありませんから。

しかしながら過程を経て努力をしても、getしなければ職務に就けない資格というものは存在するわけで、医師国家試験に合格できず、そのまま消息がわからずにいた大学時代の同級生がいます。最近になってFacebookのおかげで元気にカフェのオーナーをしていることを知り、ちょっと安心したものです。

過程があって結果がついてくる。それが一番望ましい流れだと思います。

 
2つめ。その資格だけで生きていけるような資格は、そう簡単には取れないということ について。

世の中にある資格の中のうちの多くは、言ってしまえば別にあってもなくてもそれほど変わりはない資格です。その資格を持っていさえすれば食いはぐれることはないような資格は、残念ながらそうそう多くはないのが現実です。それでも認定料という名の上乗せの料金を取ってお免状を発行したり、diproma なんてオシャレな呼び方をして人を惹きつける資格ビジネス展開者が多いのは、それほどそういった形式を望む人が多いから に他なりません。ヨガの講座でも、認定書が発行されるかどうかの質問は少なからずあるそうです。

資格が取りたい という気持ちの裏にはどんな希望や期待があるのでしょうか。その資格があるから仕事を得られる これが一番の希望でしょうが、それ以外にもいろいろな思いがあって当然だと思います。その分野でその資格を持っていると信用が得られる といった他人からの評価に影響を与えることができる という思いもあるでしょうし、自分はこの資格を取ることができた という自己効力感を確認したい という思いもあることでしょう。

これらの気持ちを持って資格の獲得に取り組むことは自己の成長のために大いに結構なことですから、もちろん否定はしません。ただ、その先をものすごく期待できる資格はそう多くはない ということは分かって取り組んだ方がいいということは言えると思います。受ける側だってわかりますよね、そのあたりの違い。受講するためにまずベースとなる資格が必要で、取得までに数年の時間とその期間中の研修参加、そして試験 なんていう資格と、ネットで申し込み、通信で学んでネットで試験が受けられちゃう なんて資格。資格取得後の資格の生き方は違って当然なわけです。

というわけで、『これからどんな資格をとるべきか』 その質問へのお答えです。
一生ものの資格を手に入れたい方はぜひそれ相応の覚悟を持ってお取組みいただきたい。苦労して手に入れた資格は、間違いなく一生 生きますから。
自分の守備範囲を広げたいとお望みの方は、学びの延長、学びの一環として手に入る資格をお取りになることは素敵なことでしょう。
簡単に手に入れられそうな資格だけでこれから先をどうにかしていこうとお考えの方は、その先がそれほど甘いものではないと思いながらお取組みになる方がいいでしょう。ただその先に、本当に出会うべき資格やお仕事が待っている可能性もありますから、ぜひがんばっていただきたいと思います。

私もまだまだ道の途中です。学びの先に資格をいただけることもあるかと思います。これからも、いただく資格に相応しい人でいられるよう精進いたします。

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